自社では気づきにくい“当たり前”の落とし穴

「うちはコミュニケーション、悪くないと思うんだけどね」 経営者の方から、よく耳にする言葉です。

確かに、経営者や古参社員にとっては、社内のコミュニケーションは日常の一部。
慣れ親しんだ空気感や話し方に違和感を覚えることは少ないでしょう。 しかし、新しく入社した人間にとっては、その”当たり前”が壁になります。

とくに最近では、「報連相が足りない」「自分で考えて動けない」といった若手への不満と同時に、 「職場に馴染めず、数ヶ月で辞めてしまう」という声も増えています。

実はその原因、若手の能力不足ではなく、社内の”コミュニケーション風土”にあるのかもしれません。

現場で起きていた“優しくない言葉”の実態

ある法人が20園の保育園を運営しています。

このうち、なぜか毎年新卒が短期間で辞めてしまう園がありました。 保育の内容や業務量に大きな差はありません。

現場の様子を観察していると、ある特徴的なやりとりが頻繁に聞かれました。

「え、なんで? それやってって言ったっけ?」 「それ、誰に言われたの?」 「わかんなかったら聞いてって言ったよね!」 「え、意味わかんない・・」

いずれも、言葉としては間違っていないかもしれません。 しかし、口調や空気に「責め」がにじんでいると、受け手は委縮します。

保育士という職業柄、優しく穏やかな対話が多いと思っていた分、 そのギャップに驚かされた新人たち。 「質問しづらい」「怒られてばかり」という感覚が蓄積し、早期離職につながっていたのです。

風土がつくる“言葉の雰囲気”に目を向ける

この問題の根底には、単なるコミュニケーションスキルの未熟さだけでなく、 組織に染みついた風土やマネジメント構造があります。

・”わからなければ自分で聞きに来るべき”という属人的な姿勢
・指導や対話が”経験則”に頼っており、言語化・共有されていない
・中堅層が「教える立場」ではなく「監視する立場」になってしまっている

こうした風土が放置されると、良かれと思った指摘が、新人には脅威として受け止められ、 その繰り返しが「ここではやっていけない」という判断を早めるのです。

対策(1):受け入れ施策の見直しによる安心感と定着の強化

新入社員が組織に早く馴染み、安心して業務をスタートできるように、オンボーディングの見直しは不可欠です。

以下のようなポイントを整理し、現場単位で実施できる仕組みに整えましょう:

・業務内容の説明
・組織文化
・価値観の共有(全社だけでなく組織単位も重要。どちらか一方しかできないなら、まずは現場組織での実施を優先)
・メンターやバディ制度の導入、紹介ミーティングで人間関係の土台づくり
・フォローアップ体制(入社後1週間・1か月・3か月などで面談やフィードバックの実施)
・相談窓口や、体調変化や気持ちが可視化できる簡易日誌の活用

これらは特別なリソースを要する取り組みではありませんが、定着と安心感に大きな違いを生みます。

対策(2):経営者による価値観と方向性の提示

次に重要なのが、「どんな価値観を大切にしているのか」「この職場で目指している姿は何か」を明示することです。

もし現場の風土に乱れがあるなら、経営者自身が率先して、正しい方向性と期待値を具体的に示すことが必要です。

たとえば:

A.「高校野球の出場をめざしているチーム。集まるときはダッシュで集合。個人ごとの目標に向かってコツコツ努力する」
B.「野球は心身を鍛える手段。チームの仲間を大切にし、この3年間で仲間との絆を深めてほしい」

どちらも正解ですが、組織としてどちらを大事にしているのかが曖昧だと、現場は混乱します。

会社・各組織の指針が現場に届き、スタッフ全員が「私たちは何を大事にしているか」を認識している。 この状態が定着すれば、自然とコミュニケーションの質もそろい、安心感ある風土が生まれていきます。

対策(3):ミドルマネジメント支援による空気づくりのリード

中堅社員やリーダー層は、現場の空気を形作る大きな存在です。

この層に対して、アサーティブコミュニケーションやフィードバック研修を行うことで、 「伝える内容ではなく、伝え方」への意識が生まれます。

自分がどんな言葉遣いをしているのか、 どんな表情や声のトーンで話しているのか、 実際にチェックしてもらうことで、多くの気づきが生まれるはずです。

特に、部下や後輩との関係に悩む人ほど、学びの吸収が早く、実践につながります。

まとめ:風土を見直すことで未来の定着率が変わる

コミュニケーションは、技術以上に「風土」です。 その場にいる人間が、何を当然と思い、どんな空気を生み出しているか。

経営者として、自社の空気に無自覚でいることは、離職リスクを見逃すことにつながります。

だからこそ、今一度問いたいのです。 「自社のコミュニケーションは、誰にとっても優しいものか?」

チェックリストを活用し、自社の対話スタイルを可視化してみてください。 小さな一歩が、大きな定着と信頼を生む第一歩となるでしょう。

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