制度を整えても人が定着しない理由とは?
「テレワークも導入した」「有給も取りやすくした」「初任給も上げた」
それでも、思うように人が採れない、あるいは定着しない——そんな悩みを抱えている中小企業の経営者は少なくありません。
実は、制度だけを整えても、社員の心に届かないことがあります。 選ばれる企業になるには、“制度”ではなく“内面=職場の土壌”の整備が必要なのです。
制度は一流、でも人が辞める会社
私が以前関わったIT企業では、福利厚生は大企業並み。給与も水準以上。リモート制度もあり、採用ページも見やすく、魅力的な要素が揃っていました。
しかし、面談で社員の本音を聞くと—— 「何を聞いても“自分で調べて”と言われる」 「会議はあるけど、言いたいことが言えない」 「困ったときに頼れる人がいない」
つまり、“制度はある”けれど“関係性がない”。このギャップが、人を静かに辞めさせていたのです。
求められているのは「実感できる安心感」
今の若手は、制度そのものよりも、「その制度が自分にどう機能するのか」を重視しています。 たとえば、
- リモート制度 → 実際に使っている人がいるか?
- 有給制度 → 取りやすい雰囲気か?
- 研修制度 → 本当に成長に繋がっているか?
この“使われ方”まで見て、自分が働く未来を想像しています。 つまり、「制度はあるけど使われていない」「理念はあるけど共有されていない」となると、選ばれない時代なのです。
対策(1):制度よりも“空気”を整える
職場の“空気”とは、人間関係や言葉のやりとり、反応のことです。 社員が感じているのは、制度そのものよりも、日常の“微細な感情の動き”です。
- 挨拶を返してもらえない
- 雑談がない
- 忙しそうで話しかけられない
こうした小さな違和感の積み重ねが、「この職場にはいづらい」という感情につながります。 まずは、安心して話せる雰囲気や、小さな感謝が飛び交う職場づくりが、制度以上に大切です。
対策(2):制度の“使われ方”を点検する空気”を整える
既にある制度が「どう使われているか」を定期的にチェックすることも大切です。
- リモート勤務を誰が使っているか?
- 有給を遠慮している部署はないか?
- 研修後の変化は現場で見えているか?
使いづらさがあれば改善し、「使われる制度」へと育てていく。制度は導入がゴールではなく、“活用されて初めて”効果を発揮します。
対策(3):小さな成功体験をストーリーとして共有する
「うちの制度は本当に使えるんだ」 「この会社は人の挑戦を応援してくれるんだ」
そう思ってもらうには、“実例”が必要です。
- リモートで子育てと両立している社員の声
- 有給でリフレッシュして仕事に戻ったエピソード
- 社内研修で昇進につながった体験
こうしたストーリーは、制度の“血の通った証拠”になります。 社内報や朝礼、社内チャットなどで発信することで、文化として根付いていきます。
中小企業だからこそ“内面整備”が差になる
制度を整えることは大切です。 しかし、「それをどんなふうに運用しているか」「社員がどう感じているか」という“内面”が伴わなければ、人は定着しません。
中小企業は、大企業のような資本力では勝てませんが、 “人の心に寄り添える距離感”という強みがあります。
この強みを活かして、制度だけでなく、「安心感」「つながり」「言葉が届く関係性」を整えていきましょう。
選ばれる会社とは、仕組みではなく、空気で判断される。 そのことを、今こそ意識してみてください。