「人間関係が悪い」の裏にある本当の原因とは?
「うちの会社、人間関係が原因で辞める人が多いんです」
そう語る経営者や人事担当者は少なくありません。
でも、本当に「人間関係」が問題なのでしょうか? 私が関わった多くの現場で、表面的には“人間関係の悪化”に見えるものの、 その根っこには「役割の曖昧さ」があることがほとんどでした。
役割があいまいだと、期待と現実のズレが起き、責任のなすりつけ合いや不満が蓄積されます。 これが“人間関係の悪化”という形で表に出てくるのです。
事例:責任の所在が不明でギクシャクする現場
ある製造業の企業では、クレーム対応の責任が営業部か品質管理部かで毎回もめていました。
営業部:「現場の対応が遅いから顧客が怒っている」 品質管理:「情報が不十分なのに、丸投げされても困る
本来であれば、対応フローや役割分担が明確であればスムーズに動けるはずです。 しかし、「誰がどこまで責任を持つか」があいまいなため、都度のやりとりで不満が蓄積されていきました。
このような役割の曖昧さは、チームの雰囲気を悪くし、離職やミスを見ぬふりをする風土が蔓延します。
原因:役割設計の“あいまいゾーン”が放置されている
多くの中小企業では、「人が足りないから、できる人がやる」という運用が日常化しがちです。
それ自体は柔軟性のある働き方ですが、以下のような“あいまいゾーン”が常態化してしまうと問題です。
- どこまでが自分の仕事かわからない
- 自分がやらないと誰もやらない
- 自分ばかり損をしているように感じる
この感覚は、放っておくと「不満」→「疑念」→「不信感」→「対立」へと発展していきます。
対策(1):役割と責任の明文化
まず必要なのは、「役割と責任範囲の明文化」です。
たとえば:
- 誰がどこまでの範囲を担うのか(例:クレーム初期対応は営業、調査と報告は品質管理)
- 不在時の代理は誰か?
- その業務の“最終責任者”は誰か?
こういったルールを文書にして、チーム全体で共有することが第一歩です。 役割を明文化すると、納得感が生まれ、曖昧さによるストレスが激減します。
対策(2):定期的な“役割の棚卸し”を行う
組織や人の変化とともに、役割は自然とずれていきます。
- 人が増えた/減った
- 担当業務が変わった
- 新しいプロジェクトが始まった
こういったタイミングで、役割と責任の見直しがされていないと、「あの人はなぜあれをやらないの?」という不満が再燃します。
半年に1回などのペースで、「今の業務と役割の棚卸しミーティング」を行うことをおすすめします。
対策(3):“役割外の貢献”を評価する文化をつくる
一方で、「役割を超えて動いてくれる人」がいる組織は強いです。
ただし、その貢献が評価されずに放置されてしまうと、不公平感につながります。
- 担当外なのにいつも助けてくれる
- 全体を見て気配りしてくれている
こうした“役割を超えた行動”をきちんと見て、評価や感謝の言葉で還元することで、良い文化が生まれます。
まとめ:人間関係の悪化は「構造の問題」かもしれない
人間関係が悪い、空気が重い—— そんなときは、まず“役割設計”を見直してみてください。
- 期待と責任の線引きが曖昧になっていないか?
- お互いのやるべきことが明確に認識されているか?
- 誰かが“損をしている感覚”になっていないか?
こうした視点で、組織の土台を整えることで、見えにくかった問題の本質が見えてきます。
職務分掌を作成することも有効ですが、ハードルが高いと感じることも多いと思います。
そんな時は、既存の組織図を詳細に書いてみることをおススメしています。これならできたものを社員の皆さんも見慣れているので活用もしやすいと思います。
ぜひ、簡単にできるところからやってみてください。